Interview with Privilege Tokyo
●まず、出身/生まれ育ち/グラフに入ったきっかけを教えてください。
名前はROB ADER(ロブ・エイダー)。
New YorkはBrooklyn育ち。パナマ系と中国のクォーターです。
アートに親しみのある家庭に生まれ、トレイン(電車の車体)に描かれたグラフィティに衝撃を受け、
グラフィティアートの世界にのめり込みました。
幼少期は、叔父がA-Train(NYを走る地下鉄路線)の車掌をしていたこともあり、
特別に入れてもらう車掌室の車窓から、クールなグラフィティを眺めるのが週末の楽しみでした。
また別の親戚がブレイクダンサーの集うスポットに連れて行ってくれたこともあり、
幼少期から “ストリート” というフィールドにインスパイアされていました。
その頃からペンを持ち歩き始め、
叔父の持っていたブラックブックにタグを描きはじめました。
ありがたいことに最初からグラフィティアートを志すにはとても良い環境に生まれ育ち、
誰かに強制されることもなくごく自然にグラフィティが自己表現の手段になっていきました。
1985年、
母が勤めていたManhattanのダウンタウンエリアを探索していたところ
たまたま街角でライヴペイントをしているKeith Haringに遭遇し全てが変わりました。
ストリートのハードな側面を持ったグラフィティと、
ミューラルなどの現代壁画の区別が付いていなかった、当時の私ですが
スプレー缶とペイントブラシを片手に黙々とアートを作り上げる
Keith Haringのライブペイントは、衝撃的で、純粋な魅力を感じました。
当時10歳頃。
その衝撃波に突き動かされた私は、
通っていたエレメンタリースクールの壁にスプレー缶で描く練習をはじめました。
母には「絶対に逮捕されないように」と忠告されましたが、
誰もその時の私を止められませんでした。
私は長らく、
アートという世界においてアンダーグラウンドの活動をしてきましたが、
今の私の大きなゴールは、
ポジティブに受け入れることの出来るアートで世界中をインスパイアし、
観る人々をハッピーにすることです。
創造的表現によるインパクトで、ポジティビティーそのものを表現したいと思っています。
●今回の個展のテーマ、開催のいきさつを教えてください。
今回のPRIVILEGE TOKYOでの展示は、私が東京で開催する初めての個展で、
テーマとなったキーワードは “GATES AVE”(ゲイツ・アヴェニュー)。
私自身がティーンエイジャー時代を過ごしたBrooklynの街の一角と
その雰囲気を東京に届けるためにこのタイトルにしました。
“Welcome to Brooklyn, New York to Tokyo, Bedstuy”
などのキーフレーズをちりばめ、
私がグラフィティに没頭し始めた90年代の頃の街並みや空気感を表現しています。
当時、「ManhattanからBrooklynに行きたい」と言うと
どのタクシードライバーにも断られるほど、Brooklynは治安の悪い街でした。
そのイメージを
“Welcome to Brooklyn”の標識を見た途端に不穏そうな表情を浮かべるタクシードライバーを描くなどし、
より当時の、よりリアルなBrooklynを表現しました。
今回の作品群に描かれているシャッター、ガレージ、パーキングは
どれも実際に存在する(存在した)場所で、
壁に描かれている友人のアーティストのタグやメッセージも当時のもの。
年代によるスタイルを統一し、限りなく忠実にアート表現したつもりです。
かつての5 Points, Queensにもあったような、
オールド・ニューヨークのスタイルを意識しつつ、
今のNew Yorkにはほとんど残っていない
当時のRAW(生々しい)な感覚のNew Yorkの街並みを描きました。
人は皆、
自分が生まれ育ち刺激を受けた少年・少女時代のことを “My Era”(〇〇世代のような意味) と言い
大切にしますが、
私も同じように自分の生まれ育った時代を、当時の景色、スタイル、カラーを復元したかった。
外の通りで仲間とハングアウトしたり、バイクやスケートボードに乗ったり、
Black Moon、M.O.P、Gang Starr、Jeru the Damajaを聴いたり…
学生時代、Fine Art(一般芸術)のクラスを受講して水彩、油彩、アクリルなど
一般的な芸術表現の技法ももちろん学びましたが、
やはり私にはマーカーとスプレー缶が手放せませんでした。
今展示はそんな私自身のピュアなルーツが100パーセント詰まった、スペシャルな個展です。
●来場者へメッセージはありますか?
忙し中足を運んでいただき本当にありがとうございます。
“Peace & Love Worldwide!!! Spread Love.”
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インタビュー/和訳 DAN